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引っ越し難民2020年は減る?増える?
日本の賃貸住宅事情は昔と違う!?

2019年12月14日

毎年2~4月の引っ越しシーズン。毎年のように「引っ越し難民」という言葉を目にしますよね。

ただ2020年は、引っ越し難民どころか穏やかな引っ越しシーズンになるのではないかと考えられます。

「人手不足や働き方改革で引っ越し業者が大変って聞いたけど?」

そんな風に思われるかもしれません。しかし引っ越し業界だけでなく不動産業界の賃貸住宅事情まで踏まえて見ていくと、少なくとも2020年は引っ越し難民が増加するとは考えづらいのです。

今回は、引っ越し難民の2020年の動向について考えます。

引っ越し業界と不動産業界を同時に見ると分かる、2020年の引っ越し難民がどうなるかについて是非あなたも考えてみてください。

 

比較的に静かだった引っ越し難民2019年……しかし賃貸住宅市場の不穏な変化

2019年の引っ越し難民問題は、さほど話題になりませんでした。話題が皆無だったわけではありませんが、かつて社会問題になったほどではないのは間違いないでしょう。

なぜ引っ越し難民が話題にならなくなったのか。

その一要因として「引っ越しをする人が少なくなった」ことが考えられます。ここ最近、賃貸物件における契約件数が大幅に減少しているのです。

では2020年以降は引っ越し難民が増えるでしょうか?それとも減るでしょうか?

筆者の見方としては、「減少傾向」になるのではないかと見ています。

【引っ越し難民が減る理由1】引っ越しする人の数が減っている

まず引っ越し難民が減る理由は、先ほどお伝えした「賃貸物件の契約件数の減少」です。

理由は不明ですが、首都圏における賃貸物件の契約件数が大幅に減少しており、結果的に引っ越し件数も抑えられる可能性があるのです。

その事実は、アットホーム株式会社が毎月調査して公表している賃貸物件の契約件数をご覧いただくと分かります。

下図は、アットホームのデータを全国宅地建物取引業協会連合会がまとめたグラフです。

(画像1)

(画像1)引っ越し難民 2020 首都圏 賃貸 契約件数 推移

(画像2)

(画像2)引っ越し難民 2020 近畿圏 賃貸 契約件数 推移

引用:全国宅地建物取引業協会連合会

首都圏、近畿圏ともに2019年の契約件数が大きく減少しているのが分かります。

上図は前年比のグラフですが、首都圏の賃貸物件の契約件数は前年比で10%以上減少し続けている状態。また特に変化のなかった近畿圏においても、2019年に入ってから賃貸物件の契約件数が昨年より減っているのが分かります。

引っ越しは全都道府県で行われますから、上記データだけで引っ越し難民の正確な予測はできません。

しかし「東京一極集中」という言葉にあるように、最も人が集まる都市圏で明らかな賃貸物件の契約件数が減っています。

その結果として、引っ越し件数が減少しても不思議ではないのです。

【引っ越し難民が減る理由2】働き方改革による転勤の減少

そしてもう一つ、引っ越し難民が減る理由に「働き方改革」があります。

働き方改革は、労働時間の縮減や休日を増加させるといった施策であり、むしろ働き方改革が引っ越し難民の一要因と言われています。

しかし働き方改革は引っ越し業者だけの話ではありません。

働き方改革により、日本国民全体の労働に対する意識が変化しているのです。

(画像3)

(画像3)引っ越し難民 2020 平成30年版厚生労働白書

引用:厚生労働省 平成30年版厚生労働白書

上図のような意識変化は今に始まったことではありません。

ただ「働く場所は自由でありたい」と考える人が増えれば転勤が減ります。またフリーランスの増加やリモートワークの推進により、わざわざ会社の近くに引っ越す人も少なくなるでしょう。

働き方改革は、必ずしも引っ越し難民の原因となりません。むしろ「移動しない人」の増加により、今後は引っ越し難民という言葉すら過去のものになる可能性が否めないのです。

一方で引っ越し業者の人手不足は深刻化

引っ越し難民は、2016年ごろに登場して一気にトレンド化した言葉です。それまでは引っ越し難民という言葉すらほとんど見られず、ニュースや新聞で報じられたことでトレンドワードとなりました。

そもそもなぜ、引っ越し難民がトレンドワードになるほど社会問題化したのでしょうか。

理由は主に3つあります。

  1. 運輸業界の人手不足
  2. 働き方改革で運送業者の稼働時間が減った
  3. 上記2つにより引っ越しの予算が上昇

引っ越し難民が急増した理由は色々と言われていますが、筆者個人としては「1. 引っ越し業界の人手不足」が深刻ではないかと考えます。

多くのメディアでは「引っ越し業界が人手不足」と述べますが、実は引っ越し業界の人員が減っているというような明確な事実はありません。

運送業界全体を表す「運輸業・郵便業」と、引っ越し業者を含む「道路貨物運送業」の就業者数をご覧ください。

(画像4)

(画像4)引っ越し難民 2020 運輸業郵便業 就業者数 推移

(画像5)

(画像5)引っ越し難民 2020 道路貨物運送業 就業者数 推移

出典:総務省統計局 労働力調査

上図のとおり、運送に関わる仕事で極端に労働者が減っているという事実はありません。

しかしその反面、以下のような調査結果もあります。

(画像6)

(画像6)引っ越し難民 2020 物流 労働力不足

引用:国土交通省 物流を取り巻く現状について

就業者は減っていないのに、実際の物流業界内では「人手不足だ」と感じている人が多くいる状態。

双方のデータに矛盾を感じますが、真逆の調査結果である主な理由は「物流クライシス」です。

私たちの生活は、インターネットで何でも買うことができるようになりました。一時、大手運送会社が長時間労働で問題になったように、引っ越しだけでなく運輸業界全体が人手不足なのです。

運送業も年に1~2度訪れる引っ越しだけでは利益を上げられませんから、一般の荷物も輸送しています。

つまり引っ越しに時間や労働力を割いていられないほど増えた荷物により、結果として人手不足に陥っているのです。

2020年の引っ越し難民は減りもせず増えもせず?

さてここまで、2020年の引っ越し難民の可能性について考えてきました。

ここまで解説した内容のまとめとして、改めて2020年の引っ越し難民について結論を考えてみましょう。

  • ・賃貸物件の契約件数が大幅に減少している
  • ・働く場所にとらわれない働きかたが増えている
  • ・事実、2019年の引っ越し難民がそこまで話題に上らなかった
  • ・しかし引越し業界の人手不足は解消していない

上記を理由に、2020年の引っ越し難民は「減りもせず、増えもせず」になるのではないかと考えられます。

また昨今は、引っ越し難民対策として「トラックシェア」というサービスを提供する会社も登場。引っ越し業者も頻繁に引っ越し難民にならないための啓発記事を掲載しています。

こういった業界全体の取り組みと、不動産業界における少々ネガティヴな状況。

それらを踏まえると、2020年の引っ越しシーズンは穏やかになるのではないかと考えるのが妥当ではないでしょうか。