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金融機関の不正融資

2018年10月27日

 

金融機関による不正融資問題が世間を騒がしています。スマートデイズが運営するシェアハウス「かぼちゃの馬車」問題を皮切りに、スルガ銀行を始めとした各金融機関の不正融資が次々に明るみに出ています。

「不労所得」「安定収入」「年金代わり」といった甘い言葉にのせられて不動産投資を開始し、多額の負債を抱えることになった被害者オーナーの数は膨大です。

なぜ、金融機関においてそのような不正が多発し被害額を増やし続けてしまったのか。そして今後自分が不正取引に関わらないためにはどうしたらいいのか、今回は金融機関の不正融資問題に徹底的に迫ります。

 

 

 

【金融機関による不正融資問題】

 

静岡県の地銀の雄、スルガ銀行による不正が次々に暴かれ、岡野光喜会長、米山明広会長に続き取締役5人が辞任するという異例の事態に発展しました。

金融機関における不正問題は時々ニュース報道されますが、投資家からの訴訟に発展し、会長をはじめ役員を一掃するまでの事態は滅多に起きません。今回の事件がいかに社会的影響力が強く衝撃的だったかが分かります。

そもそもこのスルガ銀行の不正融資問題とは何だったのか。一連の流れと原因を調べてみました。

 

 

《スルガの不正融資とは?》

不正問題の発端は、スルガ銀行が不動産会社と共謀し、融資時の書類を改ざんして不正な融資を実行し、投資家に高利回りで資金を貸し出していたことが始まりです。一連の具体的な流れは次の通りです。

不動産投資物件を販売する不動産会社がセミナーでサラリーマン投資家を集客し、投資物件を紹介します。
そしてその投資物件に興味を持った投資家が物件購入に向けて手続きを開始します。
ここまでは一般的な流れですが、問題はこの後です。

通常、不動産投資を開始する際は金融機関からの融資を受けて物件を購入します。金融機関は、不動産の担保性や収益力、契約者についての属性をチェックして、融資するか否かの判断をします。

実は今回の問題は、この「不動産の収益力」と「契約者の属性」についての資料が改ざんされて、適切な審査がされない状態で融資が行われていたことにあります。ポイントは、不動産会社とスルガ銀行担当者が「共謀」して書類の改ざんを行なっていたことにあります。

 

《具体的な書類偽造の手口は?》

具体的な偽造の手口としては、不動産の収益力と契約者の属性についての書類が改ざんが行われました。

まず不動産の収益力についてです。不動産投資における収益力の基本は「賃料収入」です。融資審査の際は、賃料収入がどれ程得られる物件なのかを重視するのですが、不動産会社と銀行担当者が共謀し、レントロールといわれる賃料一覧表を偽造したのです。

例えば、実際には4万円の家賃の部屋を「5万円」と書き換え、さらに空室で家賃が入っていない部屋について「入居中」と真実ではない情報を記載し、まるで高稼働で収益が上がっている物件に見せかけて、銀行審査部を騙したのです。もちろん銀行審査部は書類だけで判断せずに物件現地に確認に行きますが、不動産会社が事前に物件に行き、空室部屋にカーテンをつけたり、水道メーターが動くように見せかけるため開栓しておくなどの偽装を行ないました。そのため審査部では「書類」と「現物」両方から嘘の情報を読み取り審査承認をせざる得なかったのです。

次に契約者の属性についてです。融資審査の際、契約者の資産について確認します。年収はもちろん、保有している資産の担保性も重要視し、中でも肝になるのが預金残高です。当然預金残高が多い人ほど審査の際には有利になるのですが、ここでも不動産会社と銀行担当者が共謀し偽造を行いました。それも「通帳の写し」を改ざんするという悪質な手口です。

例えば本当は通帳残高が50万円しかないにも関わらず、あたかも500万円あるように見せかける偽造行為です。

このようにスルガ銀行における不正融資とは不動産会社と銀行担当者が裏で手を組み、通常なら融資がおりないような物件と契約者に、強引に融資承認を出させていたのです。

 

 

《何故、書類の改ざんは防げなかった?》

顧客側の視点からいうと、このような不正な審査を防ぐことは「できなった」といえます。一部の顧客は自ら好んで通帳の偽造などを依頼していたようですが、そうでない優良顧客の場合は審査書類を不動産会社や金融機関に提出し、後は結果を待つだけです。裏で自分の書類が改ざんされていることに気づくのは困難でしょう。

一方、スルガ銀行内部では、行員自体も書類偽造の事実を知りつつ、銀行自体が融資部に圧力をかけて半ば強引に不正融資を通していたという報道もされています。

不動産会社は物件を売却し利益を上げるため、金融機関は融資を実行し売上を上げるために、不動産投資に興味をもった顧客を利用して通常ありえない融資額を引っ張り物件を買わせていた状況です。

 

 

《他の銀行も不正融資をしている?》

今回話題の渦中にいるのはスルガ銀行です。不正融資問題を皮切りに「改ざん」「偽造」と悪質な手口が次々に暴かれています。
では、スルガ銀行以外の金融機関は公明正大な銀行業務が行っているかというと決してそんなことはありません。

2016年に横浜銀行と営業統合した東日本銀行も、統合後不正融資や不正行為を行い続け、2018年7月に金融庁から業務改善命令を受けました。店舗の大部分で根拠不明の手数料を受け取っており、東日本銀行の説明によれば、種別不明で受領した手数料の総額は4億6,000万円にも達するというのです。

さらに金融庁によれば、東日本銀行は営業成績の積み上げのため、企業実体のない企業を銀行主導で設立登記させ、2年間で37億円という莫大な額の不適切融資を行なってきたとのことです。

どの金融機関が公正な手続きを行い、どの金融機関が不正取引を行なっているのか、もはや一般の顧客が判断するのは非常に難しい状態といえます。

 

 

【不正融資に巻き込まれないためには】

 

《不動産業者を見極める》

不正融資などの諸問題が取り巻く不動産投資業界ですが、不動産投資や賃貸経営に興味のある方は、関わる業者、特に不動産会社や金融機関をしっかりと見極めなくてはなりません。

ただし、個人の投資家が自分で業者を見極めるのは非常に難しいはずです。不動産業者に依頼する際は、会社の事業内容だけでなく会社の姿勢や経営方針などについてもよく確認し、本当に公正な業務を行なっている会社かどうかを自身の目で見極める必要があります。

会社の業績がいいからといって真っ当なサービスを提供しているかというと、それは誤解です。むしろ、大規模なサービス展開や人員増員を行なってないのにも関わらず数年間で売上を急激に伸ばしている会社は何か裏の事情があるのかもしれません。

実際に、スルガ銀行の不正融資問題に関わり顧客に投資物件を販売してきた会社は、たった数年間で売り上げを数十倍に増やし続けてきたのです。

 

《金融機関と複数付き合う》

不正融資に巻き込まれないためには複数の金融機関と付き合うことが重要です。何をするにもリスク分散は必要ですので、不正取引などが発覚した際に一行としか付き合っていないのは危険な状態といえます。

金融機関は、業績や支店長の方針によって融資に対する姿勢が日々変わるものです。そのため、同じアパートで融資を受けようとしても、ある金融機関は融資NGだったが、違う金融機関では承認が取れた、ということも有り得ます。金融機関は融資実績を重視します。そのため、一行としか取引していない状態で何か問題が発生し金融機関を変えようと思っても、取引実績のない人については融資の相談にのってくれないケースもあります。
したがって、金融機関は決して一社に限定せずに、リスクヘッジもかねて、複数社と同時に取引をしておく必要があります。

さらに、複数の金融機関と取引をすることで得られるメリットは他にもあります。複数の金融機関と取引をすると金利や借入期間などの交渉時に有利になります。
なぜなら、一社しか付き合いがないとその一社との条件が合致しなければ融資を受けることができないため、独占状態になった金融機関は強気交渉できるので投資家は不利になります。

しかし、二社三社と付き合うことで他社の条件を持ち出した上での交渉ができるので、有利な条件を引き出しやすくなります。

 

【まとめ】

いかがでしたか?
かつて銀行はお固く誠実なイメージがあり、決して不正を働くような業種とは考えられていませんでした。

しかし時代は変化しました。歴史的な低金利を背景に銀行が通常の銀行業務だけでは稼げないようになったのです。

その結果今回ご紹介したような銀行の不正の多発をまねいています。
現在表面に出ている問題自体、もしかしたら氷山の一角に過ぎないかもしれません。第二第三のスルガ銀行が発覚した時に、いかに自分が被害を受けないようにリスクを回避できるかが重要です。そのためには銀行だからと安心せずに、これからはしっかりと自分自身で銀行を見極めていく必要があるのではないでしょうか。