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本当は不動産賃貸の仲介手数料が0.5ヶ月分!?
法律と判決に見る今後の賃貸業界

2019年9月14日

一度でも引っ越しの経験があれば、賃貸契約の仲介手数料を払ったことがあるという方がほとんどかと思います。実は引っ越しの時に支払う仲介手数料、家賃1ヶ月分ではなく0.5ヶ月分が法律で定められたルールだというのをご存知でしょうか。

ただ同時に、仲介手数料について定めた法律の中で、ある条件の下に仲介手数料1ヶ月分が許されているのも事実。

今回は知る人が少ない「不動産賃貸の仲介手数料が1ヶ月分」である理由と、今後の賃貸不動産において仲介手数料が0.5ヶ月分になる可能性があるかを解説します。

 

 

東急リバブルが敗訴!不動産賃貸の仲介手数料が0.5ヶ月分に!?

少し古い情報になりますが、2019年8月に驚きのニュースが流れました。
賃貸住宅を借りた男性が「仲介手数料の原則は家賃0.5カ月分だ」として東急リバブルに手数料の返還を求めた裁判で、東京地方裁判所が男性の訴えを認める判決を出したのです。

ご存知の方も多いかもしれませんが、この報道は不動産業界でも大きな話題になりました。司法書士や不動産に明かるい人のブログなどでも様々な意見が述べられています。

さて世間では「仲介手数料0.5ヶ月分」にスポットが当てられていますが、本判決の争点は仲介手数料とは別に「(不動産会社から)仲介手数料は1ヶ月分であると伝えられていなかった」という点も重要なポイントです。
では仲介手数料の法的な基準を確認しながら、果たして賃貸契約の仲介手数料を一体どのように扱い、認識するのが正しいのか考えてみましょう。

 

法律上で決められた仲介手数料は何ヶ月分?

まず賃貸契約の仲介手数料は何カ月分が正しいかという点について。
これは法のルールさえ理解すれば難しくありません。

まず宅地建物取引業法の定めを見てみましょう。

 

(報酬)
第四十六条 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによる。
2 宅地建物取引業者は、前項の額をこえて報酬を受けてはならない。

引用:e-Gov 宅地建物取引業法

 

上記の通り、実は不動産業者の仕事に直接影響する宅地建物取引業法には、仲介手数料の額が明記されていません。つまり条文内にある「国土交通大臣の定めるところによる」という部分が肝なのです。
では「国土交通大臣の定めるところによる」がどのようなものかというと、実は国土交通省の前身である「建設省」の時代に決められたルールを指します。

 

建設省告示第千五百五十二号
第三貸借の媒介に関する報酬の額
宅地建物取引業者が宅地又は建物の貸借の媒介に関して依頼者の双方から受けることのできる報酬の額の合計額は、当該宅地又は建物の借賃(中略)の一月分に相当する金額以内とする。この場合において、居住の用に供する建物の賃貸借の媒介に関して依頼者の一方から受けることのできる報酬の額は、当該媒介の依頼を受けるに当たって当該依頼者の承諾を得ている場合を除き、借賃の一月分の二分の一に相当する金額以内とする。

引用:国土交通省 告示・通達一覧

 

上記で重要なのは「賃貸借の媒介に関して依頼者の一方から受けることのできる報酬の額は、当該媒介の依頼を受けるに当たって当該依頼者の承諾を得ている場合を除き、借賃の一月分の二分の一に相当する金額以内とする」という部分です。
つまり「仲介手数料は借り主0.5ヶ月分、貸し主0.5ヶ月分で、合計1ヶ月分です」ということを言っているのです。
では次のお話に移る前に、上記までをもっと簡単にまとめておきましょう。

  • 賃貸不動産の仲介業者が受け取れる仲介手数料は家賃1ヶ月分が上限
  •  ただしその内訳は、大家さん0.5ヶ月分、入居者0.5ヶ月分以内という内訳にしなければいけない

賃貸不動産の仲介手数料が1ヶ月分の理由

今回の判決により、世間では「仲介手数料が0.5か月分なんて知らなかった!」という声が相次いでいます。特に参議院議員がTwitterで「知らなかった!」とつぶやいたことで、ニュースが一気に拡散されることになりました。

さて実際のところ、普段私たちが取り交わしている賃貸契約の仲介手数料は「1ヶ月分」です。中には賃貸オーナーから仲介手数料1ヶ月分を貰えるのを理由に、入居者の仲介手数料は無料なんてサービスをしている会社もあります。
どちらにしても、賃貸オーナー、もしくは入居者から1ヶ月分の仲介手数料を貰うのは違法なはずですが、なぜ仲介手数料1ヶ月分がまかりとおるのでしょうか。

これは前章でお伝えした旧建設省の告示に理由が隠されています。

賃貸借の媒介に関して依頼者の一方から受けることのできる報酬の額は、当該媒介の依頼を受けるに当たって当該依頼者の承諾を得ている場合を除き、借賃の一月分の二分の一に相当する金額以内とする

よく読んでみると「(媒介)依頼者の承諾を得ている場合を除き」という一文があります。つまり、承諾さえ得ていれば仲介手数料を入居者、もしくは賃貸オーナーのから1ヶ月分貰うことは許されているのです。これが賃貸契約の仲介手数料が1ヶ月分という常識ができた理由です。

 

今後も賃貸不動産の仲介手数料が1ヶ月分から変わらない5つの理由

では今回の裁判の結果により、今後賃貸物件の仲介手数料はどのようになっていくでしょうか。
不動産業界内や不動産に詳しい人の間で様々な意見が飛び交っていますが、可能性として高いのは「何も変わらない」という結果。
事実、東急リバブルは仲介手数料が0.5ヶ月分かどうかではなく、「いつ承諾を得たか」という点について東京高等裁判所へ上告しています。0.5か月分かどうかという点は、もはや争点ではないのです。

また他にも、仲介手数料1ヶ月分という慣習が変わらないと考えられる理由はあります。

  • 多くの不動産ポータルサイトの物件情報に「仲介手数料1ヶ月分」と表記している
  • 少なくとも契約前の重要事項説明までに仲介手数料は1ヶ月分と伝える決まりである
  • 上記までをもって入居者からは承諾を得ていると解釈できる
  • 仲介手数料が0.5ヶ月分になっても他の部分に転化される
  • 仲介手数料0.5か月分では賃貸専門の不動産会社の経営が成り立たない

昨今では「敷金礼金ゼロ!仲介手数料ゼロ!」なんて物件も珍しくありません。ただ仲介手数料は不動産会社の利益そのもの。仲介手数料無くして経営は成り立ちません。
そこで昨今では、別の部分で利益を上げる不動産会社が多くなっています。

もっとも分かりやすいのが、「賃貸オーナーから広告料を貰う」「礼金に転化する」など。中にはあまり聞き慣れない「○○サービス料」なんて名目の料金を徴収しているなんて話もあります。

上記を「ずるい!」「違法だ!」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、仲介手数料を下げられてしまうと不動産会社の利益にダイレクトに影響します。そう簡単に規制できるものではありませんし、簡単に仲介手数料0.5ヶ月分が妥当と言えるものではありません。
つまり、仮に仲介手数料が0.5ヶ月分と規制されたとしても、規制された分は必ず別の料金へ転嫁される可能性が非常に高いのです。

 

違法な業者もあることから、何かと矢面に立たされがちな不動産業界。
ただ少なくとも、入居者目線で真摯に向き合ってくれる不動産業者も多くあります。国家資格がないとできない手続きや大家さんなどとの難しい交渉も引き受けてくれますので、あまり仲介手数料を目の敵にする必要な無いと言えるでしょう。