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鉄骨より木造住宅は火災に強い!?
意外と知らない構造別の特徴2019年11月9日冬の時期になると徐々に増えていく住宅の火災。実は3月と4月が最も火災の多い時期というのをご存知でしょうか。まだ乾燥している時期に、春風が吹くのが原因だと言われています。
ただもしかすると、あなたは火災の発生原因を「日本は木造住宅が多いから」と思っていませんか?
確かに木造は、火災件数の多い住宅の構造です。
ただ必ずしも、「木造」と「燃えやすい」「崩れやすい」は直結しません。実は状況によって、木造のほうが火災に強いと言える面もあるのです。
今回は、話題になることも少ない木造住宅と火災の関係を分かりやすく解説。
鉄骨と木造の構造による意外な事実や住まいを守るための方法もご紹介します。きっと「知らなかった!」と思える情報があるはずですよ!
鉄骨と木造住宅の火災件数と木造が火災に強い理由
「木造と鉄骨を比べて、火災の危険性が高いのはどっち?」と聞かれたとき、どう思うでしょうか。
恐らく「木造」と答える方が大半ではないかと思います。
確かに木は鉄に比べて燃えやすく、木造住宅で発生する火災件数のほうが明らかに多くなっています。
ただ火災は、始めから住まいそのものが燃え始めるわけではありません。最初に燃えるのは室内の家具、建具など。室内にある物に引火し、次第に建物に熱が加わる。最終的に建材などが燃えるというのが火災のメカニズムです。
どちらにしても室内が燃え始めれば、建物の躯体や建材も燃え始めます。するとやはり、鉄骨のほうが安全と思われるでしょう。
しかし視点を変えると、鉄骨造の住宅一択ということにはなりません。燃えるのは確かに木造ですが、「燃えにくさ」「強度」という点で見ると木造のほうが勝るのです。
【理由1】木材は炭化すると燃えにくくなる
そもそも木材は燃え始めたとしても、すぐに内部まで完全に燃えることはありません。木は燃えると炭になりますが、その炭が表面を覆うため内部まで燃える時間を遅くさせるのです。
もともと木材は水分を含んでいることもあり、簡単に燃えたり、すぐに燃え尽きてしまったりしません。しかも木材が燃えるスピードは、1分間に0.6~0.8ミリずつ。木造住宅の柱は100~120ミリありますので、仮に全部燃えるとしても1時間以上かかります。
火災に気づいて逃げるまでの時間としては十分と言えるでしょう。
【理由2】木材は燃えても強度が落ちにくい
木材が意外と燃えにくいという事実に、意外だと思われたのではないでしょうか。実は木材の内部まで燃えにくいという点が、火災時の木造住宅の強度に深くかかわります。
木材の内部が燃えないということは、火災が起きてもしばらくの間は住宅の形は保たれます。テレビドラマで見るような、火災が起きてすぐに崩れ落ちるなんてことはありません。
それに対し「鉄」は熱に弱く、早々にやわらかくなります。燃えることこそないものの、鉄は木材に比べて強度の落ちるスピードが速いのです。
木材と鉄の強度が落ちるスピードは、以下のグラフが分かりやすいでしょう。
木材は徐々に強度が落ちていきます。20分経ってようやく強度が半分まで落ちるというスピードです。
対する鉄は、たった100~200℃で加熱しただけで10分もしないうちに強度が20%まで落ちます。なお火災が起きたときの最高温度は1000℃前後。鉄骨の建物は、内部が加熱され続けると崩れてしまう可能性が高いのです。
ただ鉄骨造の建物は、鉄骨をコンクリートが覆っていますので内部まですぐに熱が伝わるわけではありません。
ただ過去に、海外のビルやマンションで火災が起きて崩れ落ちる凄惨な事件を見たことがないでしょうか。あの事故こそまさに、鉄骨の住宅で起こり得る火災の結末なのです。
住宅の火災は構造よりも耐火性能で考えよう
さて、火災に対する木造と鉄骨の違いをご覧いただきましたが、最初にお伝えした通り火災は室内で起こります。
木造か鉄骨かは関係ありません。
では具体的に、住宅の火災はどのように起こるのでしょうか。
この記事をお読みのあなたは、もしかすると「絨毯やカーテンに火が点いてしまう」というイメージを持っていませんか?
実は室内の家具や建具も、そう簡単には燃えません。
例えば室内にある燃えやすそうな物として、カーテンや絨毯、壁紙などがあります。これらはポリエステルやアクリルなどの「化学繊維」が主な素材です。
では化学繊維は何℃で燃えるのか。参考資料をご覧ください。
木の発火点は「400~470 ℃」です。それに対し化学繊維の多くは、500℃を超えないと発火しません。つまり、よほど室内に燃えやすいものが散乱していることでもなければ、簡単に室内で火災は起きないのです。
ではなぜ、住宅の火災は発生するのでしょうか。答えは実にシンプルです。
上図の通り、放火以外の火災原因は「ガスコンロ」、「たばこ」、「ストーブ」が多くを占めています。
使い方によりますが、上記それぞれの温度は以下の通り。
ガスコンロ 表面温度500℃超 たばこ 600~800℃ 電気ストーブ 表面温度500℃超
火災は、非常に高温の物を間違って使用することがきっかけとなり発生します。よって住宅自体がいきなり燃えたり、家具がすぐに燃えたりして火災が発生するわけではないのです。そもそも日本の住宅は燃えにくい素材を使うように義務付けられていたり、火が簡単に他の部屋に回らない構造にするよう決められていたりします。よほどの過失がなければ、火災は起きません。
ただ上図にある通り、コンセントを始めとした電気配線や家電の発火という不可抗力による発火もあります。放火ともなれば、セキュリティを万全にしていない限り防ぎようがないでしょう。
そう考えていくと、火災を起こさないためには以下が重要と言えます。
- ・住宅の耐火性能を高める、若しくは耐火性能の高い住宅を購入する
- ・室内の家具も燃えにくい素材のもので揃える
- ・火の扱いに気をつけ、家電の間違った使い方をしない
- ・日頃から住宅周りのセキュリティに気を配る
昨今は、住宅の耐火性能が格段に向上したと言われています。また耐火性に優れたカーテンや絨毯なども販売されています。
火災を起こさないためには建物の構造云々ではなく、まずは住まいの中で燃えるキッカケを作らないこと。
それこそが住まいの火災を防ぐ唯一の方法なのです。